私が最も優れたピッチャーを誰と問われるとダルビッシュ有でも大谷翔平でもなく、田中将大といつも答える。



高卒1年目という縛りを加えれば、清原和博と松坂大輔と迷わず答えるだろう。

だが最近はだんじりの抜刀斎こと「汚原抜針斎」と選手育成のみならず養豚も盛んな筑後豚小屋球場から名古屋に出荷された「筑後コーチン=マッツァーカ」という疑似ブランドに取って代わられる形で本家は俗世から消え失せてしまったので、これ以上の言及は避けることにする。



さて、田中将大の話題に戻るが、なぜ彼が最も優れているかというと小手先のコントロールでもなく、150キロを超えるストレートや鋭く落とす高速フォークのようなスプリットでもない。

いや、言ってしまえばどれもその通りなのだが、彼はそういった部分も高いレベルにありながら非科学的な部分で他を圧倒するパフォーマンスを示している。



なんといっても彼は勝てるのだ。



勝利数は味方の援護。投手の実力ではない。



という、実に理にかなった意見もあるのだが、田中将大をみていると、どうも必ずしもそうとばかりは言えないのではないかと思わされてしまう。


それを

味方が援護したくなるから
愛されているから

などと言う声もあるが、私はそのように思えなかった。

というのも、藤田一也がヒーローインタビューのときに

「自分がチャンスで打てなかったときに将大が「もー!」という顔をしたから次は絶対打たなければいけないと思った」

と言っていたのが印象深い。


彼は誰よりもチームの勝利にこだわっている。


さらに自分に対しても厳しく、勝ったからいいではなく、「自分は全然ダメだったけど味方が打ってくれたから勝てただけ」や「結果ほど内容は良くない」などよく口にする。


そういう性格が単なる「愛されキャラ」では終わらず、チームにピリッとした雰囲気を与えるのではないかと思ってしまう。


それにただピリッとさせるだけでなく、味方も防御率1点台前半に、QS100%(2013年当時はたしか7回3失点以内)を誇った田中に対しては早めに1点。できれば3点取れればもう負けはない。

と、落ち着いて早打ちなどせず打席に入れたのではないだろうか。



他の選手に対する意見を求められても「いやー、自分が好きなようにやればいいと思う」とよく言うので、ビシビシ厳しいことを人に言う性格には見えないが、間違いなくその存在でチームを引っ張ることができる大黒柱である。



田中将大は高校時代、速球もだいたい150キロいかないくらい(マックスは150だけども)で、コントロールも今みたいに精密機械のようではなかったので、私自身、彼はプロでトップクラスに活躍するとは思っていたが、落合博満氏が「松坂を超える逸材」と評したと知ったときは「さすがにそこまで…」と懐疑的であった。

しかしその野球へのひたむきさと圧倒的な負けん気で名門ニューヨークヤンキースで今の地位を確立しているあたり、ある面「超えた」と言えなくもないのではなかろうか。


私の目には田中将大は天性の○○なるものは持っていないように映った。
ただスライダーがいい投手だと。


だが、彼は年が明ける毎に違いを見せ、2009年、野村監督最後の年のCSにおける大車輪の活躍は21歳のそれとは思えない度胸で弱小の楽天を2位に。2011年にはダルビッシュ有を抑え沢村賞を、2013年には言わずと知れた24勝0敗1Sと駆け上がった。


彼はこのスターダムにのし上がるに当たり、コントロールを、スプリットを、そして卓越したフィールディングを身につけ、2013年のCSで、当時ロッテの監督だった伊東監督(現中日ヘッドコーチ)からは「球も速くクイックも素早い。さらにフィールディングもいい。まったく隙がなかった」と脱帽せしめた。


メンタルとは数値化できないもので、非科学的だ。そして私は数値で判断できないものはそこまで信用しようとは基本思わない。
しかし彼の真っ直ぐさ、そして気持ちの強さは野球史の中でも屈指のもので、それだけでも伝わるものがあり、こと彼に関しては例外であると言わざるを得ない。



そのメンタルをもって様々なものを身につけ、またチームとしての結果もほしいままにしてきた田中将大。


その過小評価とも言える圧倒的なカリスマ性は、私の中の敬意を呼び起こすには十分であった。


そんな姿を見るにつけても彼がナンバーワン投手と賞賛せずにはいられないのである。